Dear my lovely teddy bear


「それはまるでお姫様のような」


(兄さまのバカ。兄さまのバカ。兄さまのバカ)
 毛布の中にもぐりこんで、ベンジャミンを抱きしめながら、ミニィアは心の中で何度も何度もそう呟いた。
 重くなっただなんてあんまりだ。
 そりゃ、身長だって伸びているから、以前に比べれば重たくなったのは確かだろうけど。
 でも、それにしたって、会って真っ先にそんなことを言わなくたって。可愛くまとめてもらった髪だとか、仕立ててもらったばかりのドレスとか。もっと目につくところはたくさんありそうなのに。
 ドアの開く音が聞こえて、ミニィアは毛布を頭の上まで引っ張り上げた。やって来たのが兄さまだったら、絶対に顔を見せてやるものかと思ったのだ。まだ自分は怒っているのだ。
「僕の小さな妖精は、どこに隠れてしまったのかな」
 でも、聞こえてきた声は兄さまのものではなかった。
 それにほんの少しがっかりしながら、ミニィアは強くベンジャミンを抱きしめた。
「ほら。君の可愛い顔を見せておくれ」
「……父さま」
 ゆっくりと毛布をまくられてしまえば、もう隠れることはできなかった。優しく抱き起こされて、お父さまに顔を覗きこまれる。
「泣いてたのかい?」
「泣いてないわ」
 もう子供じゃないのだから、そんな簡単に泣いたりはしない。
「でも、そんな顔をしてるよ」
 お父さまは、からかうように笑いながら言う。ミニィアはむっとしながら声を張り上げた。
「泣いてないもの! ベンジャミンに相談してただけ!」
 ベンジャミンは、ミニィアの一番の友達だ。
 ミニィアの元にやってきてからというもの、今日までずっと一緒だ。もう一緒におままごとをするようなことは無くなったけれど、それでもいつもベッドにいて、ミニィアの色んな話を聞いてくれる。
 でも、怒鳴ってからミニィアは後悔した。
 ベンジャミンのことは大好きだけど、そんなことを言うのは、少し子供っぽいような気がしたのだ。だってお母さまのベッドには、ベンジャミンのような『お友達』の姿は無い。
「ベンジャミンに、何の相談をしてたんだい?」
「……何でもない」
 お父さまにベンジャミンをまじまじと見られるのも何だか恥ずかしくて、ミニィアは毛布の中にベンジャミンを隠そうとした。
「ベンジャミンには言えるのに、お父さまには言えないのかい? 少なくとも、クマよりは経験豊富だと思うんだけどな」
 お父さまは残念そうな顔をしながら、ベンジャミンの頭を軽く叩くようにして撫でた。
 ベンジャミンは、生まれてからずっとぬいぐるみだから、お父さまの方が物知りなのは当然だ。ベンジャミンはミニィアの話を聞いてはくれても、何かを教えてくれることはない。
「だって、兄さまがひどいこと言うんだもん」
「あぁ」
 お父さまは、全てわかったというような顔で頷いた。兄さまに話を聞いて、ミニィアの様子を見に来たのだろうということは彼女にもわかっていた。
「そうだね。レディに対して重たいだなんて言うのはあんまりだね。紳士失格だ」
「お父さま、兄さまのこと叱ってくれた?」


こなぎさんが漫画を、杏子が小説を担当しています。