Pinkish cherry

表紙は美里さんにお願いしました(特殊紙使ったのできらきらしてます
ゲストにmaoさんをお招きして、甘いエドリディ漫画を描いてもらいました^^
原作と兄妹パラレルの話を一つずつ書いて、全体的にほんわかな本になったかなと。

07年5月インテ発行/08年5月インテ完売
「……あたしなんか連れてきて、本当に大丈夫なの?」
 今日はエドガーの友人のホームパーティーだった。気軽なガーデンパーティーだからと、エドガーに言葉巧みに誘われてついつい頷いてしまったが、気軽なパーティーと言う割りにはしっかりドレスを着させられてしまったし、髪だって一人前の女性のように結い上げられてしまった。
 こんなに着飾ったって似合わないと、鏡を見て怖じ気付くリディアに「こんなに似合っているのに、僕の可愛い妹は何を言うんだろうね?」と、そう言って微笑んだのもエドガーだ。
 幼い頃に両親を亡くし、それからリディアはこの年まで、ずっと孤児院で暮らしてきた。妖精を見ることができるリディアは、 そこではずっと変り者として、いじめられて過ごしてきた。当然、異性から誉められたことも、キスをされたこともない。だからエドガーの態度には驚くし、それに戸惑ってしまうのだ。
 始めはただの、貴族の気まぐれだと思っていた。毛色の違う少女を引き取って、気紛れに相手をするだけの、オモチャ代わりにでもするつもりなのかと。
 けれどエドガーはそうではなかった。
 仕事と社交で忙しいだろうに、毎日リディアの相手をしてくれるし、それにいつもリディアに向けられるエドガーの視線は、言葉にはできないほど優しい、甘えてしまいたくなるようなものなのだ。
 もちろん、今だって、そうで。
「何を言うんだいリディア。今の君は、どこからどう見ても可愛いらしい一人前のレディだよ。僕は今日、君を自慢するために来たようなものなんだから」
「……自慢できるような妹じゃないのよ」
「どうして」
 エドガーは本気でそう尋ねているようだった。どうしてと、そう言いたいのはリディアの方だというのに。
「じゃあ反対に聞くけど、兄さまはあたしのどこを自慢できるって言うのよ」
 髪はぱっとしない鉄錆色で、瞳はきつすぎるとよく言われてきた。瞳だけでなく性格もきついと、リディアは自分でもよくわかっているつもりだ。
「……エドガーみたいな髪だったら良かったのに」
 自分の容姿を改めて考えると寂しくなって、思わず小さくぽつりと呟いてしまった。
「リディアはそのままで、十分可愛いよ」
「いい加減なこと言わないで。そんなこと言うのは兄さまだけよ」
「他の男は、まだ君の魅力に気付いていないだけだよ。あぁ、もちろんその必要も無いけどね。この指に絡み付くような柔らかい髪も、全てを見透かしてしまうような瞳も、可愛い唇も。僕だけが知っていればいいものだから」
「……エドガー」
 恥ずかしいことを言わないでと、リディアは目で訴える。リディアの言いたいことなんてわかっているのだろうに、エドガーは嫌な笑顔で言葉を続ける。
「あぁそれから、寝顔の可愛さも忘れちゃいけないな。昨日なんて、夜中に寝呆けて僕に抱きついてきたんだけど……リディア、覚えてる?」
「え、そんな寝てる時のことなんて覚えてな……っていうか、もう黙ってよ!」
 寝呆けている時のことだとはいえ、自分から抱きついただなんて恥ずかし過ぎる。そんなことをわざわざ言ってくるエドガーにもむっとしたから、リディアは羨ましい金髪をえいっと引っ張ってやる。
「こらこら、リディア。髪を引っ張るのは止めなさい。痛いってば」
「エドガーの髪の毛なんて、ゴブリンに全部抜かれちゃえばいいんだわ」
 少し本気でリディアが言うと、向かい側から小さく笑う声が聞こえて、リディアは驚いた。
「レイヴン。今のリディアの言葉に笑うだなんて、僕の髪の毛が抜かれてもいいってことかい?」
「とんでもない」
 二人のやりとりを聞いて、リディアは小さく目を見開いた。レイヴンが笑ったところなんて見たこともない。今だってリディアが顔を向ければ、レイヴンはいつもの無表情で、やっぱり笑った顔なんて想像もつかない。
「ほらリディア。もう着いたよ」
 馬車が止まり、扉が開く。
 先にステッキを持って降りたエドガーは、淑女にするように優しくリディアに手を差し伸べる。その手に掴まるのは妙に気恥ずかしかったから、リディアは重たいドレスを両手でつまむと、ぴょんと飛び降りてやった。
 あなたの手なんかいらないんだからと、強気な眼差しで見上げてみれば、エドガーは吹き出しそうな笑顔でリディアを見つめていた。
「僕の妹は、まったくお転婆だね」
「そんな妹なんていらない?」
「まさか」
 油断していると、いつだって不意をついて頬に唇が降ってくる。
「ますます夢中になるよ」