「 It is surely ten years after. 」(06年春コミ)
オフ本/A5/60P/表紙一色刷り/¥600
連載中のお隣さんシリーズ。調子にのって本まで作ってみました(笑)
本編と同時期の番外編二つと、ハウっさん高校生時代の話一つ。
「何やってるの? 化学?」
「そうだけど。邪魔だからあっち行って」
他に言い方ってものが無いのかね、このお嬢さんときたら。
「教えてあげるよ。僕理数系は得意だから」
「結構です!」
「何でそんなに嫌がるのさ」
他の女の子達なら、僕が教えてあげるよなんて言えばみんな我先にと押し寄せてくるぐらいだっていうのに。ソフィーは全く僕の魅力を理解してないばかりか、あえて目を逸らそうとしているかのようにすら見えるぐらい。
「あんたなんかに教わったら、わかるものもわからなくなっちゃうわ!」
「何てこと言うのさ! あんたって本当可愛くないなぁ!」
成長するごとにどんどん生意気なことを言うようになってきたとは思っていたけど、どうしてこう人の好意を踏み潰すようなことばかり言うんだろう。僕にはソフィーの思考回路がさっぱり理解できない。
「レティーやマーサちゃんは素直に僕に聞きに来るってのに。あんただけどうしてそうなんだろうね? 女の子なんだから、少しは可愛げってものを身につけた方がいいんじゃないのかい? あぁ、あんたにそんなこと言っても無駄だろうけど」
ソフィーからの返事は無くて、言葉の代わりに飛んで来たのは、分厚い分厚い辞書が一冊。……ってこれ、角が頭にでも当たったら、絶対殺傷能力高いって! 幸いにも僕には優れた反射神経ってものがあるから、そんなヘマはしないけど。
受け止めた辞書をベッドの上に放り投げて、もう一度僕もその上に戻ったら、今度は「人のベッドに我が物顔で座らないでよ!」と怒鳴られた。
「……ねぇソフィー。あんたってもしかしなくても、僕が何をしても気に入らないんじゃないの?」
まったく、そうだとしか思えない。小さい頃から面倒を見てやってるっていうのに、この扱いは不当なんじゃなかろうか。愛情込めて育ててあげたのに、どこから道を間違えたんだろう。
「あんた、あたしの邪魔しかしないじゃない!」
「どこがさ!」
「……まぁいいや」
とりあえずは寝よう。昨日も寝たのは遅かったし、それに何だか人のベッドっていくら寝ても寝たような気がしないから。今寝たら昼過ぎまで余裕で眠れるような気がして仕方ない。
「ハウル!」
甲高い声が僕の耳の中に突っ込んできた。
「……あぁ、ソフィー」
縄跳びをしていたのは僕の小さなお隣さん。長い赤毛を両耳の下で左右に二つに縛っている。ツインテールっていうのかな。それを揺らしながら、縄跳びを引きずりながらソフィーは僕に駆け寄ってきた。
「数日ぶりだね、ソフィー」
「ハウル、今日も朝帰りなの?」
「……何でそんな言葉知ってるのさ?」
意味をわかって使ってるわけじゃないだろうけど、最近の小学生ってのはどうしてこうなんだろう。僕の小さい頃はもっと可愛げがあったような気がするのに。
「ねぇハウル、お家帰ってこないでどこで寝てるの?」
「どこで寝てるんだと思う?」
「野宿してるの? 公園で寝てるの? ホームレスさん達みたいに、ダンボールのお家で寝てるの?」
「……あのさぁ、ソフィー」
何て言えばいいのかわからなくなる。何もわからない子供が、ただの好奇心で尋ねてくれるから余計に。
小学校に入ってちょっと経ったばかりの女の子に、まさか本当のことなんか言えないけど、言えないと言えないでやりにくったらありゃしないんだから。
「あれ、そういやソフィー、今日学校は?」
「今日お休みだよ」
「そうだっけ?」
「だからハウルも学校お休みなんでしょ?」
「え? あぁうん」
ごめん、曜日感覚なんて何も無かったよ。別に平日で学校があろうと、そんなのサボるのなんていつものことだから。
「ねぇハウル、公園行こ」
「えぇ?」
何でいきなりそうなるんだか。見下ろす僕にソフィーはにこにこ笑ってる。そうやって笑う顔は可愛いけど。笑って頼めば僕が頷くとでも思ってるの?
「あのね、逆上がりできるようになったの。ハウルに見せてあげるから」
逆上がりって何なんだそりゃ。一体いつの話なんだろう。少なくとも僕にとってはそれはもう昔の。昔々の物語で。
「ね、ハウル」
僕はお腹すいてるしだるいし眠いし。
「……わかったよ、ソフィー」
前半は今の話、後半は過去話でしたー
過去話のがある意味ラブラブしてたりします。表紙のハウっさんがカッコイイですよー!
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